dahlia kaoriのつぶやきエッセイブログh.kaori

都内、大きな駅の西口。
百貨店前の通り。その片隅。 昼間。サラリーマン、学生、作業服姿、OL。
それぞれがどこか違う一点を見つめ、煙りをふかしている。
お手軽に仕切られた『喫煙エリア』という境界線は 目に見えないロープで街から喫煙者を縛る。


『喫煙コミュニティと喫煙具店店主』~前編~


肩身の狭い世の中になった。
そこに点在する誰もがそう思っているようにも見える。
私はタバコが嫌い。当然そう言う所には近寄らない。
でもその日、『喫煙エリア』の光景を目の当たりにしてみて、がぜん興味が沸く。
なんて特異で面白い場所なのかしら!

喫煙者が一角に集まり、 近づくでもなく、離れるでもなく、距離を保ってる。
職業も年令も全くバラバラで、人生上でも接点のない(と思われる)人たちが、
喫煙という行為で同じスペースと時間を共有している。
街中でパッとみただけで「あ、あの人は喫煙者」と判断できる、
こんなに目で見て分かりやすいコミュニティ(スペース)は他にあるかしら。

しかも、別にそこに立ち寄ったからと言って
隣人に挨拶することもしない。ただ自分の用を済ませては去っていくだけ、という奇妙な成り立ち。
何かの趣味で繋がっているコミュニティなら会話が生まれても自然。でもそれが見当たらない。
いや、常連同士なら事情が違うのかも知れないけど、巨大な東京の街で、あの人の多さ。
やはりそれに当てはまるケースは少ないハズ。

あそこに立ち寄った人たちで
喫煙コミュニティでも作ったら相当な会員数に膨れ上がるに違いない。
ちょっとした集会ができるわね。もっと灰皿を設置しろ、とか、値上げ反対!とか、一致団結できる要素は多々ありそうだもの。
そこでタバコの新製品発売キャンペーンやれば確実ね。

その日はスペースからはみだすほど、人が多かった。
それなのに、全員が全員、だまったまま、違う方向を見てる。
まるでペンギンみたい。

ペンギンって団体でいても、みんな自分勝手な方向を見てたりするのよね。
何を見てるのかしらと視線の先を見ても、何もないのよ。空。空だけだったりするの。
それとそっくり。
お互いの邪魔にならないように、詮索しないように、を狭い空間で実践するとペンギン状態になるのかしら。
こんなに興味深いエリアだとは知らなかった。喫煙スペース。あそこから何かが生まれそう。

後編へ続く*